寂寥ノ章

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 九尾の狐を目指す彼女は、僕を何故か気に入り、幾度となく魂を喰らうため、籠絡しようとする。  しかし、彼女の大人らしさのかけらもない人間姿を見ると、やはり彼女はまだまだ、傾国の美女に化け、一国を手のひら上で転がした、かの高名な九尾の狐には程遠いといった感じである。  まあ、彼女は自称善狐なので、魂を食らう以外の悪さはしないらしいのだが。 「じゃあさ、最初に泉が言ったことは、どう言うことなの?」 「ん? 寂しいなんて自分勝手だ、ってことか?」 「それそれ。どうして自分勝手なの? 別にそんな風には思えないんだけど」 「それなら説明してみなさい」 僕がそう言うと、彼女は頭を抱え、それからゆっくりと言葉を紡いだ。 「例えば、わたしが寂しい感情を抱くとするでしょ? その時、私は必ず他人との間に距離があることになる。周りに人がいないから、寂しくなるとするならば、周りに居るべき人に寂しさの原因を求められるはずじゃない?」 「ふむふむ」 「周りに居るべき人がいないから、私は寂しくなるのでしょう? それなら、私が寂しくなるのは、泉がいないからであって、泉のせいで私は寂しくなる」 「その意見自体が自分勝手だという意見に対してはどうする?」 「その意見も自分勝手だと返せば問題ないわ」 「なるほど」     
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