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緊張ノ章
「緊張」とは心臓の加速である。
新年度が始まったばかりの教室では、必ずと言って良いほど、「自己紹介」が存在する。
「はあ。またこんな煩わしいことを」
「泉、頑張れー。グッドラック!」
「幸運をって、俺に何を期待してるんだ」
「そりゃあ、一撃でクラスみんなの人気者になるような自己紹介をすることで気分が良くなって、私にスイーツでも買う気分になってーー」
「結局食べもんか!」
「それでそれで、もしよければ油揚げがプラスされちゃったり」
「はいはい。それより、どうするかなあ」
「こういうのって、無難にこなすのが一番じゃないの?」
「こういうのに限らず、何やったって無難にこなすのが一番だよ」
「そういうもんかねえ。あ、この列の順番になったよ」
「あー。わずかばかり緊張感が……」
「へー。泉が緊張しているところ、初めて見たかも」
「俺は緊張しいだから、よく緊張してるよ」
「例えば?」
「そうだなあ。先生に呼び出された時とか?」
「呼び出される時ほとんどないじゃん」
「他には……、女の子と喋る時とか?」
「全然ないでしょうに」
「今も喋っているんだが」
「え? あ、そうか」
「お前は自分が女だという自覚が足りてないんじゃないか?」
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