緊張ノ章

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「そりゃあもちろん」 「でも、稲穂は上司ばっかりいて、後輩がいなさそうだ」 「ぐ、私だって可愛がってる後輩の一匹くらい……、一匹はいるわよ!」 「一匹いただけ良かった」 「人間に安心されるとなんだかムカつくわ」 「それは良かった。って、ああ、次は俺の番か」 「じゃあさ、泉は心臓が加速する理由、どう考えてるの?」 「そうだな。今思いついた答えをいうとするならば、心臓は緊張状態に入った時、加速することで焦りを生じさせている。しかし、普通は緊張状態になった時、冷静になるべきだとは思わないか?」 「たしかに、緊張状態って、いわゆるピンチだからね。集中しなければならないタイミングであることは間違いないのかも」 「そう。それなのに、あんなに加速する。心臓が加速するタイミング、緊張以外に一つあるだろう?」 「なに?」 「ランニングをしている時だ。特に長距離走を走ったら分かりやすいんだが、走り始めは心臓はゆっくりから徐々に早まっていく。心臓が慣れ始めてからが、長距離走の始まりなんだ。そこから思うに、緊張した時、僕たちは走り出す準備をしているんじゃないか?」 「そんな、どうして走り出すの?」     
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