緊張ノ章

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「昔は俺たちも、狐も、いわば弱肉強食の世界で生きてきた。そんな時の緊張状態は、つまり狩る時か、狩られる時、どちらにせよ必要だろ? 走るって」 「なーんか、泉ってそれっぽく聞こえるように説明するのが上手いよね」 「いや、これは俺の意見に過ぎないんだから、稲穂も考えておいてくれ」 「女の子に、そんな無茶なこと言っちゃダメでしょ?」 「いや、お前は女の狐だからな?」 「え、え?」 「俺の番。おい、稲穂、静かにしてーー」 「おんなのこ? あれ、おんなのこってなんだろう?」 「いや、やっぱり、そのまましばらくフリーズしておいてくれ」  僕は逃げ出したい気持ちを精一杯抑え、椅子を立ち、自己紹介を始めた。
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