4人が本棚に入れています
本棚に追加
群衆ノ章
「群衆」とは、愚か者の集いである。
「人が多いねえ」
「そりゃあ、お正月なんだから神社には人が多いさ」
「ちなみにここは何の神様を祟っている神社なの?」
「お稲荷様だ」
彼女は身体をピクリと反応させた。
もちろん、僕の頭の中で。
「ていうか、私が来てから初めてだよね。こんな遠くまで来たの」
「そりゃあ、俺は遠出が嫌いだからな。混んでいるところはもっと嫌いだ」
「じゃあ、どうして初詣なんて言い出したの?」
「狐が憑いたから、もし悪霊なら払ってもらわないと……」
「神様は妖に干渉しないんだけどね」
「でも、九尾の狐の最終目標は神様なんだろう?」
「ええ、この神社に祟られてる神様になることね。あ、そう思えば、イメージトレーニングに使えそう!」
「何千年後に実現するんだろうな」
「あと、四本!」
「は? ああ、尻尾の数か」
僕は目の前の行列を見て、再び嫌悪感を露わにする。
「それにしても、人間もここまで集まると滑稽だね。あれ、なんていうんだっけ、周期ゼミ?」
「ああ、あのグロいやつか。言い得て妙だな」
「あのどでかいお社の前まで続く列、上から見たらさぞかし気持ち悪いんだろうなあ」
「プライドの高い人間様が聞いたら怒りそうだな」
最初のコメントを投稿しよう!