群衆ノ章

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群衆ノ章

 「群衆」とは、愚か者の集いである。 「人が多いねえ」 「そりゃあ、お正月なんだから神社には人が多いさ」 「ちなみにここは何の神様を祟っている神社なの?」 「お稲荷様だ」  彼女は身体をピクリと反応させた。  もちろん、僕の頭の中で。 「ていうか、私が来てから初めてだよね。こんな遠くまで来たの」 「そりゃあ、俺は遠出が嫌いだからな。混んでいるところはもっと嫌いだ」 「じゃあ、どうして初詣なんて言い出したの?」 「狐が憑いたから、もし悪霊なら払ってもらわないと……」 「神様は妖に干渉しないんだけどね」 「でも、九尾の狐の最終目標は神様なんだろう?」 「ええ、この神社に祟られてる神様になることね。あ、そう思えば、イメージトレーニングに使えそう!」 「何千年後に実現するんだろうな」 「あと、四本!」 「は? ああ、尻尾の数か」  僕は目の前の行列を見て、再び嫌悪感を露わにする。 「それにしても、人間もここまで集まると滑稽だね。あれ、なんていうんだっけ、周期ゼミ?」 「ああ、あのグロいやつか。言い得て妙だな」 「あのどでかいお社の前まで続く列、上から見たらさぞかし気持ち悪いんだろうなあ」 「プライドの高い人間様が聞いたら怒りそうだな」     
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