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「ああ、いや、もしかすれば故意で生じたものだという可能性もある。例えば……、最近でいえばいじめとか」
「いじめなんて、人間特有の愚か極まりない行動だよね」
「人間様じゃないと出来ない行動だぞ。きちんと敬え」
「ははー。人間様すごい!」
「いじめ自体は昔からあったらしい。それこそ、平安時代とか」
「へいあんじだい?」
「おじいさんとおばあさんが川に桃を拾いに行く時代だ」
「とっても平和だね!」
「いじめがあるって言ったばかりだろう……」
「昔々あるところに、桃を拾ったいじめられたおばあさんがおりました」
「桃太郎は人間退治をするのか?」
「なんだかとっても、ハッピーエンドだね」
「どう考えてもバッドエンドだ。桃太郎は鬼を殺すんだよ」
「桃太郎って強いんだね。鬼は妖の中で最強なんだよ?」
「そんな奴が人間殺すなんて、残酷にも程があるだろう?」
「ちなみに桃太郎って、顔が桃なの?」
「桃の中から出てくるんだよ!」
彼女は尻尾を揺らして笑った。
「それで、なんで寂しいことは自分勝手なの? 答えを教えて」
僕は少し息を吸い込んでから、彼女に質問をする。
「もし、稲穂がいなくなれば、俺は寂しがると思うか?」
「そりゃあ、当然……、当然、思ってくれるよね?」
「いま、お前は寂しいと思っただろう?」
「え、あ、確かに……」
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