寂寥ノ章

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「これが最大のヒントだ。寂しいということ自体は自分勝手ではない。それこそ、さっき稲穂の言った理論で通用するだろう」 「じゃあ寂しいことは自分勝手にはならないじゃない」 「いや、違う。寂しい感情を抱くためには何が必要だ?」  彼女は頭を抱えたまま、僕の顔を見つめる。 「何?」 「他人が必要だろう?」  彼女は深く相槌を打って、納得の表情になった。 「なるほど、その他人を得るまでの過程が含まれているから、自分勝手ということ?」 「さすが、九尾の狐候補生だな」 「やった!」  彼女は両手でガッツポーズを可愛らしく決めてから、僕の肩を叩く。 「もっと褒めてもいいんだけれど?」 「稲穂は褒めたら衰えるタイプだからな」 「我ながらレアなタイプだ!」  少しばかり、周囲の空気がひんやりとしてきたので、僕は前を向いたまま横にいる彼女に言った。 「それじゃ、あったかいものでも食べに行くか」 「きつねうどんを所望します」 「昨日も一昨日も晩飯に油揚げ絡んでただろ! まあ、別にいいけど」 「雑食だけど好き嫌いはします」 「全く、自分勝手な野郎だ」 「寂しがり屋には負けてないよ」 「お前は寂しがりでもあるだろう?」 「うっ」  彼女は少し俯いて、僕の背中を数回叩いた。
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