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僕が彼女を小馬鹿にしたような顔でそう呟いたので、彼女は耳を立て、尻尾の毛を逆立てて反応する。
「この服は泉が買ってくれたものだから汚したくないの!」
「こういうところは、獣らしく素直だな」
「私は獣じゃない!」
「はいはい。そんなに大事にしてくれると買ってやった甲斐があるよ。妖狐の稲穂ちゃん」
「!? いきなりそんな褒めるなんて、な、何を企んでるのよ!」
彼女は尻尾を元気よく振りながらそんなことを僕に言う。まるで獣らしくない反応だ。
「でも、人の地面に対する扱いが不当ではないかと、俺は何度も思ったことがある、それは事実だ」
「私も不当に扱っていたから、妖も同じだということが発覚したね」
「ああ、悲報だよ」
僕がわざとらしく肩を落とすと、彼女は僕の右肩に手を置いて問いかけた。
「じゃあ、どうして不当だと思ったの?」
「まず第一に、地面はよく踏まれる」
「当然ね。地面なんだもの」
「なのに、たまにしか怒らない」
「一応怒るよね」
「考えてみろ、俺たちは年がら年中踏みまくってるのに、振動が帰ってくるのは一年に一度来るか来ないかだ」
「なるほど、地震は私たちの踏んだ振動だったんだね」
「第二に、地面は時折触れることすら避けられる」
「さっきの私だね」
「ばっちいから、触っちゃダメ! って、子供の頃言われなかったか?」
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