大地ノ章

2/4
前へ
/48ページ
次へ
 僕が彼女を小馬鹿にしたような顔でそう呟いたので、彼女は耳を立て、尻尾の毛を逆立てて反応する。 「この服は泉が買ってくれたものだから汚したくないの!」 「こういうところは、獣らしく素直だな」 「私は獣じゃない!」 「はいはい。そんなに大事にしてくれると買ってやった甲斐があるよ。妖狐の稲穂ちゃん」 「!? いきなりそんな褒めるなんて、な、何を企んでるのよ!」  彼女は尻尾を元気よく振りながらそんなことを僕に言う。まるで獣らしくない反応だ。 「でも、人の地面に対する扱いが不当ではないかと、俺は何度も思ったことがある、それは事実だ」 「私も不当に扱っていたから、妖も同じだということが発覚したね」 「ああ、悲報だよ」  僕がわざとらしく肩を落とすと、彼女は僕の右肩に手を置いて問いかけた。 「じゃあ、どうして不当だと思ったの?」 「まず第一に、地面はよく踏まれる」 「当然ね。地面なんだもの」 「なのに、たまにしか怒らない」 「一応怒るよね」 「考えてみろ、俺たちは年がら年中踏みまくってるのに、振動が帰ってくるのは一年に一度来るか来ないかだ」 「なるほど、地震は私たちの踏んだ振動だったんだね」 「第二に、地面は時折触れることすら避けられる」 「さっきの私だね」 「ばっちいから、触っちゃダメ! って、子供の頃言われなかったか?」     
/48ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加