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どうしても僕はここから逃げ出したかった
どうかしてるんだ僕は
自分が世界の異物であるように感じた
どこにも居はしないけど
冷たい音がする
冷たい音がする
硝子にヒビの入る音だ
君を思い出す
透明な硝子のような君を思い出す
君の声を思い出す
透明な硝子に陽の差すような君の声を思い出す
君の泣き叫ぶ声を思い出す
硝子を叩く吹雪のような君の泣き叫ぶ声を思い出す
割れてバラバラになってはいないだろうか?
それともそれは僕だろうか?
「淋しかったんだ」
その声が届くだけで
硝子を隔て何もかもが遠かった
眩しいものほど反射して
何もかもが見えなかった
なるべく小さく息をしよう
ここには空気が少ないから
硝子が割れたらその先に
君が居るといい
けれど破片で怪我をさせないといい
いつしか視界は真っ白で
手や爪は真っ赤だった
情けなくて仕方ない顔
硝子にはもう何も映らないが
どうしても僕はここから逃げ出したかった
どうかしてるんだ僕は
自分が世界の異物であるように感じた
この破片がぴったり嵌る
そんな場所はないと理解した時から
どうしても僕はここから逃げ出したかった
向こう側と空気を繋ぎ
「淋しかったんだ」
その声が届くだけで
冷たい音がする
冷たい音がする
破片のひしめき合う音だ
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