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いつ見た夢だったのか、どんな夢だったのかも定かでない。わたしには気づいたときに捕らえられていたひとつのイメージがある。
ただ道だけがある世界。曲がりくねっていて山道のようでもあったけれど道以外の景色はなく、ただただ白い世界に道だけが存在していた。映像として視覚として道が捉えられるのではなく、道がある感じだけがあったのかもしれない。曲がりくねってはいてもその曲がり具合も、道幅も、勾配もわからなかった。
そしてその道にあるわたしはとても孤独だった。物音のしない場所で聞こえてくる「しいん」という静けさの音さえせず、世界にはわたしだけしかいないことが圧倒的な直観として得られるのだ。孤独に満ちた世界にいてわたしは幸せだった。幸福感に満たされていた。孤独であるとはわたしにとって寂しいことでも辛いことでも悲しいことでもなかった。その孤独は現実の世界においてはイメージでしかなく、どこへ行けば、どうすれば手に入るのかわからないことがたひたすらに寂しかった。
――あの幸せな孤独に満たされた世界を。
赤いオートバイは駆けていったような気がしたのだ。
続きは文学フリマ東京25のエ-38で頒布の『憧憬トラクション』にてどうぞ。
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