二人の実習生

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二人の実習生

   二・二人の実習生  無事、任されていた高尾山での下見を終え、暦も変わった五月の頭。世間では待ちに待ったゴールデンウィークに突入する。  連日、テレビからは故郷に帰省したり、海外に遊びに行ったりする人たちのために、新幹線や飛行機の空席情報、高速道路の混雑具合が流れてくるが、教師にはあまり関係なかった。環の勤める高校では、休み明けに近隣の大学から数名、教育実習生を迎えることが決まっているからだ。その準備で忙しかった。  しかも今年度は中学・高校両方の教員免許を取得予定の学生ゆえに、実習期間も三週間と長めだ。どちらか一方ならば二週間で期間は終了するものの、本人の意向なので受け入れた以上、職務を全うするしかない。生徒が休みの間は、その受け入れ準備に当てていた。  環は既婚者ではなく独身なので、家族持ち以上に使われてしまう。いつものことだ。  二名来るうち一人が数学専攻だというので、学年主任から面倒を見て欲しいと頼まれた。     
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