二人の実習生

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 実習生の指導は今回が初めてというわけではない。数年前にも別の高校で受け持っていたので久しぶりだ。  実際に朝のホームルームに立たせてみたり、授業の模擬をお願いしたり、他の教科の参観などを行う。生徒とも極力触れ合わなければならないので、学食で昼食を取るのも実習の一環になっていた。  毎日、朝八時から夕方の五時までびっちりやることがあり、自由時間はほとんど取れない。空いた時間は翌日の授業の準備や、日誌を提出することが義務づけられているので、教える側も教わる側も忙しくなる。  夏野の職員室での評判は上々だった。派手目な外見のわりに、内面は今時の若者にしては珍しくしっかりしているようで、環が言ったことはほとんど一度で理解していた。質問をぶつける時は、鋭い部分を指摘してくるので自身の勉強にも一翼(いちやく)(にな)っている。 「あいつはあまり信用しない方がいい」  たまたま職員室まで忘れ物を取りに戻った環に、コーヒーを飲んでいた広瀬が助言して来る。 「……どういうことですか? なにか悪さでもしましたか?」 「いや、そういうわけじゃない」 「はあ……」     
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