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広瀬勝巳という男
自分の持つ記憶の何が正しくて、何が間違っているのか。膨大過ぎる知識量の中から真実だけを選りすぐろうとしても、ある特定の映像だけに支配されて恐怖にうちひしがれる。
────あの男から逃げなければ。
繰り返し夢に見るのだ。シルエットだけが浮かび上がり、自分よりもがたいのよい男から幾度となく殺される。崖から突き落とされたり、車と接触する直前だったり、幼少の時に山で誘拐され遭難させられたのちに餓死したりと様々だった。それらの内容をローテーションで、忘れかけると強制的に見せられてしまう。それは小学校に入学する前から始まり、成人した今でも続いていた。
これらの夢は空想や妄想ではない。新聞やインターネットなどでできる限り過去の記述を調べると、どれも実際に起こっている事例だった。
どうして夢を見てしまうのか。一体なにを伝えたいのか。
特別霊感があるわけでも、感受性が豊かというわけでもないので、なぜ不審死を遂げる内容ばかりを見てしまうのかわからなかった。どう立ち向かうべきか頭を悩ませていた。
一・広瀬勝巳という男
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