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結界を張るとばれるという予想的中に喜ぶ間もなく、アンジェリカは辰巳に襲わせようとけしかけてくる。辰巳も乗り気ではないようなので安心していたが、アンジェリカがヒステリックに怒るので、ハアと盛大に溜め息を吐きながらも近づいて来る。
「ごめんな、環さん。ちょっとチクっとするけど、我慢してくれ」
「嘘ですよね? や……いやだ……やだ、嫌だ!」
両目を真っ赤に染め、牙を剥きだしにしながら唇を近づけて来る。アンジェリカはというと、ようやく一矢報いることができる喜びに浸っているのか、気が狂ったように高笑いしている。
本当にこのまま辰巳のパートナーにされてしまうのか。二度と勝巳に逢えなくなってしまうのか。いくら外見が似ていても、環が恋焦がれている相手は辰巳ではない。
嫌々と顔を振って抵抗を繰り返すも、顎を掴まれ阻止されてしまった。もうだめかも知れない。ロッキングチェアに縛られているため身動きも取れず、背中に隠した真実を知らせないまま終わりたくはない。
────助けて、アルカード…………いや、勝巳!!
そう心で強く念じると、噛みつく瞬間だった辰巳の姿は瞬時に蝙蝠へと変わった。パタパタと環の周囲を飛んでから、やがて扉を破壊して入ってくる男の肩に止まった。
────来てくれた。助けに来てくれたんだ!
「……アルカード様!? どうしてここに……!」
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