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「繁盛とは無縁の店だったのに」
ぼそりとつぶやくと、店の中から店主が現れた。
昔の面影はなく、一瞬だれだかわからなかったほどである。無精ひげも生やさず、髪も短くととのえている。ぼさぼさの髪でひげも伸ばし放題だったころが懐かしい。
「あ」
「よう」
店主は俺と目があうと、とたんに眉間にしわを寄せた。まるで犬を追い払うように、しっしっ、と手を振る。
俺も仕返しとばかりに商売をしている者なら、だれもが胸糞悪くなるような憫笑を浮かべてやった。
「ずいぶん立派になったもんだ」
皮肉たっぷりに俺が言うと、店主も負けじと返してくる。
「あんたが出かけて力が弱まっているあいだこそチャンスだと思ってな。どうだ。おまえもこれで入ってこれまい」
確かに、俺は儲かっていそうな雰囲気は嫌いだ。しかし、まだ肝心なことに気づいていないようだ。
「んふふ。だといいが」
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