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突然、声を掛けられた私は、ゆっくり顔を上げる。彼だ・・・・・・。
まさか今日も、ここで結城さんに会うとは思わなかった。
「何だか、すみません。休日まで顔を合わせてしまって」
結城さんが頭を下げる。本当に申し訳なさそうなのが、少し可笑しい。
「いえ。いいんです」
会えて嬉しいです、とも言えず、私は言葉選びに困っていた・・・・・・。平和な日曜日の午後。頬をかすめて吹き抜けていく川風が心地よかった。堤防から川を眺めると、今にも水際から飛び立とうとしている白い鳥が視界に飛び込んでくる。
「長谷川さんの考えていること、当てましょうか?」
「え。ええ!?」
いったい何を見透かされるのかと私が慌てていると、結城さんは微笑を浮かべて私を見つめた。
結城さんは、私の勤めている小さな会社の上司だ。
私は結城さんのことが好きだ。
しかし職場恋愛はご法度である。敗れた場合は恋も職も両方なくすことがあるのでリスクが高すぎる、というのは女子高時代の私の友達が言った言葉である。その彼女も職場で恋をして・・・・・・つまり体験談だというわけ。
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