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「久しぶりだね。高橋さん」にっこりと山縣が笑う。
「元気だった?」
「うん。山縣くんも?」
そんなどーーでもいい会話に、淳之介の苛立ちのバロメーターが上がっていく。
早く会話を終わらせろよ!
『さたじゅーーん!』
座敷から幹事を呼ぶ声がする。
このタイミングで!?
「……有紗! 戻ろう!」
酒の勢いと牽制を込めて淳之介が苗字では無く、「有紗」と名前を呼ぶ。
「俺高橋さんとちょっと話してもいい?」
な……なんてストレートな質問!
牽制球のホームランかよ!?
「もちろん」
答えたのは有紗だった。
『さたじゅんやーい!』
座敷から酔っ払い集団の呼ぶ声がする。
「ほら、佐多くん呼んでるよ」
有紗が笑顔を浮かべる。
営業スマイルではない、100パーセント心からの笑顔だ。
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