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3. アリだな
「じゃあ、とりあえず再会を祝して乾杯」
オレンジ色のグラスと黄金色のグラスががクァンと良い音を立てる。
口の中に甘く広がり、小さな気泡をたてるカクテルは、今の有紗の気持ちそのものだった。
これこそ『再会を祝して』にふさわしい。
連絡先を交換して翌日、すぐにあの山縣くんからメッセージが届いたのだ。
〈明日とか予定ある? よければ一緒に夕食でもどうですか?〉
もちろん有紗は二つ返事だ。
顔良し、頭良し、性格良しでスポーツマンの山縣くんは西中女子の憧れの的だった。
当時の有紗は遠くからひっそりと眺めるだけ。
みんなのキャピキャピ話にも入っていけないくらい、本当にひっそりと好きだった。
交わした会話といえば
「山センが呼んでたよ」という職員室からの伝言を伝えたのみ。
それだけで「ありがとう」ってとろけるよな笑顔をくれた山縣くん。
この会話だけがキラキラとした思い出だったのに。
そんな王子様からまさかの連絡がきて、ご飯まで食べに行くことになるなんて。
有紗は淳之介には足を向けて寝られないと思った。
あの時面倒くさがらずに同窓会に行ってよかった。
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