3. アリだな

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「……あっそう」  ナイフとフォークを置くと、一気にビールの入ったグラスを空にした。 「お疲れ様でした」  そう言うと有紗は席を立つ。 「ちょっ! 帰るの!?」 「帰る。お先」  伝票を掴む。 「待ってって」    ガコン!  慌てて立ち上がった淳之介がどこか打ったのか「い……!!」とだけ叫んだ声が聞こえた。  聞こえたけれども思いっきりその「い」も聞き流す。  自分の注文分だけをきっちり払って外に出た。    カランコロンという牧歌的な音を置き去りに。  有紗が足を止め携帯を取り出した。 〈私でよかったら、これからお願いします〉  携帯で言うくらいなら、その場ですぐに山縣くんに言ったらよかった!  私を躊躇(ちゅうちょ)させたものは、きっと道ばたの小石程度のものだったのだろう。  蟻んこじゃあるまいし、迂回なんてする必要なかったんだ。
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