春一番

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 担当だった神谷さんが盲腸になって、急遽この目の前の人物が早田課長に連れられてやってきた。  だから提携先の会社の人……には違いない。    それ以外に自分に関係のある人。    大学? 高校?  ……中学?    まさかの小学校?    どこで一緒だった人なのか全く思い出せない。 「ほら、西中の……」  西中!?   西中の…………?  同級生?  部活?  せんぱ……には見えないから後輩? 「……マジで思い出せない?」  こういう時どうして早く名乗った上で、どういう関係性の人間なのか端的に説明してくれないのだろうか?    人の記憶力を試すような、間をとるのは止めていただきたい。  それでも努めて有紗は営業スマイルを保つ。  口角が痙攣(けいれん)を起こさんばかりだ。 「1年と3年の時一緒のクラスだったじゃん。佐多淳之介(さたじゅんのすけ)」  さた…………じゅんのすけ…… 「え!? それでも思い出せない!?」 「……すみません」    目の前のこの人が見るからに意気消沈する。  そんなに言ったって覚えてないものは覚えてないんだもの。
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