4. 何かが止まらない

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 網を挟んで二人はまるでお通夜状態だった。  苛立つ有紗とまさかOKが出るとは思わず緊張する淳之介。  しびれを切らしたのは有紗の方だった。  誘ったくせに、口を真一文字に閉じて目線の泳ぐ淳之介に鋭く切り込む。 「誘ってきたくせに何なのよ? その顔……。もぉー……! ねぇ、笑ってよ。……いつもみたいにへらへら笑ったらいいでしょ!?」  有紗がイライラを淳之介にぶつける。 「それは強制っすか? じゃあ、なるべくがんばるけど……」  ヘランと作り笑顔を浮かべる淳之介に思わず有紗の笑いが漏れる。 「その笑い方……!」  あ、うけた。  10年越しの願いはそういえば叶ってたんだよな。  俺の実力でもぎ取ったこの笑顔だ。  もひとつの願いは叶わなかったけどさ。  …………今は山縣のものだけどさ。  
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