春一番

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「へい、お待ち」  もくもくと湯気をたてて、目の前に器が置かれる。  モツ煮の超絶美味い店があるというので、どこでもいいやと付いてきたのだが、これは本当に美味しい。 「ね、美味いだろ!?」 「うん。確かに」  はふはふしながら有紗がモツを口に運ぶ。  一見さんでは入るのを戸惑うような外観。  開店しているのかどうかすら怪しいもんだった。  こういう『連れてきてもらわないと絶対に入らない』だろうお店を知る事はありがたい。 「…………そんでこの会社に入ったんだ?」 「そうそう」    ……気がつくとビールを飲みつつ、お互いの中学以降の身の上話になっている。    そういえば打ち合わせは……?  今頃気づいたけれど、モツとビールが置かれると卓上は結構ぎゅうぎゅうで……。  カウンターに隣り合って座って、資料を広げられるワケが無い。
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