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無言で進んでいると
ふと彰は足を止め、後ろにいた幸樹はぶつかりそうになった
「どうしたの?彰兄さん」
何も答えず、何かに駆け寄る
そこには、一人の男がうつ伏せで横たわっていた
「人間…?」
「まだ息はあるな」
男の体を少し起こす
「傷はねぇみてぇだ」
男の手と瞼が動く
「うぅ…」
そして瞼が開くと、男は彰と幸輝を見つめる
「気がついた。大丈夫か?」
「……」
何も答えずただ見つめる
「俺が見えるか?声聞こえてるか?」
「……」
「……」
「ひっ」
突然男は飛び起きる。体が震え怯えているようだった
「おい、大丈夫か?」
「お、お許しくださいぃぃぃぃ」
「なっ、おい!」
男は叫びながら走り去って行った
「どうする?追いかける?」
「ほっとけ。あれだけ走れりゃ大丈夫だろ」
「そうだね」
そう言い二人は男と逆方向へ進んだ
少し開けた場所に出る
「なんか匂うな」
「うん。焦げ臭い」
漂ってくる匂いに思わず鼻を隠す
「これはまずいかも知れない」
もう少し先へ進み下を見渡せる場所に来る
「……!?」
この場から見える光景に言葉を失う
「やはり…村で火事があったんだ。かなりの大火事だな」
「そんな…」
見渡す限り、黒く焼け跡が広がっている
「もしかして花子さんは、この火事から逃げてきた」
「可能性はあるだろうな。なんとも言えんが」
動かずただ焼けた村を眺める
その時
後ろから、足音が近づいて来た
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