44人が本棚に入れています
本棚に追加
朝の静かな山
ただ二人の足音だけが響く
「なんだ、浮かない顔だな。幸樹」
「だって…」
二人は山を降りていく
遡ること昨夜
見回りが終わり幸輝は彰の部屋に来ていた
「人里に降りる!?」
「あぁ」
「彰兄さん、正気?」
彰の発言に、幸輝は驚きを隠せなかった
「花子がどうやってここまで来たのかを知りたい」
「いや、だからって」
いきなりの事で納得はできなかった
「記憶が戻ってから話を…」
「その記憶はいつ戻ってくるんだ?」
「まぁ…それは…」
「人の娘が夜に一人でここまで来たんだ。よほど何かがあったんだろう。それにあの持っていたことも気になる。明日、早朝に出るがお前はどうする?」
「僕…」
花子について知りたいことがある。でも、人の事で深入りするのは良くないのでは
彼はしばらく悩んだ
「行くよ。僕も一緒に行く」
覚悟を決めそう答えた
「わかった。悪いな巻き込むような感じになっちまって」
「ううん」
「花子は今部屋か?」
「うん。今は凌兄さんが付いてる」
「そうか。もう下がっていいぞ。明日の準備しとけよ」
「了解」
そう言い、幸輝は立ち上がる
「幸輝、明日は内緒で山を降りる。決して誰にも言うなよ。特に花子にはな、付いて行くって言いそうだからな」
「わかったよ。彰兄さん」
こうして、二人は山を降りることになったのだった
行くと決めたものの、まだ心の何処かで納得は出来てはいなかった
しかし此処まで来て戻る訳には行かず彰の後を追う
早朝の山は少し風が冷たい
「恐らくこの道を通って来たんだな。行くぞ」
「…うん」
二人はひたすら道を進んで行った
最初のコメントを投稿しよう!