1981人が本棚に入れています
本棚に追加
「それで、茉莉さんが関根さんのリーダーってのも繋がったしね」
「そうだったんだ……」
「うん、それで土曜日……」
話に聞き入っていると、何か言い掛けて視線を外す。
照れたように口元を押さえると黙りこくってしまった。
一瞬静まった空間に、窓の外をバイクが走り去る音を微かに拾った。
「……土曜日って、土曜出勤のこと?」
「ん、この話はやっぱいいや」
瞼を伏せて背けた僅かに紅潮した顔が意外で、いじらしくて興味をそそられた。
「なに? 教えてよ~」
今は気が大きくなっているらしく、自分でも驚く程に身を乗り出して目を輝かせてしまった。
「……上目遣いは、駄目」
「え?」
軽くデコぴんで制して来たが、めげずに眉を下げたまま見つめていると、観念したのか告白してくれる。
「……また土曜日にエレベーターで会えば、何か反応あるんじゃないかって、ちょっと待ってた」
気恥ずかしそうな顔が、眉根を寄せて睨んだ。
「……」
「全力で逃げるから、何か後に引けなくなって……」
前髪を掻き上げる仕草も相まって、目に映る人は色気よりも可愛さが勝ってしまい、思わず微笑が漏れてしまう。
「……ふふふっ」
「泣いてた癖に……」
「ご、ごめんなひゃ……」
頬を摘んだ前の人も吹き出して、暫しふたりで笑いが止まらなかった。
最初のコメントを投稿しよう!