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幸せに浸った週末が明け、出社すると珍しく倉橋先輩と福地さんがつるんでデスクを覗き込んでいた。
あの一件以来、福地さんに対しては当たり障りのない態度が中心となってしまい、育成は捗っていなかった。
何かあったのかと首を捻っていると、程なくして近寄って来た先輩が耳打ちをする。
「宇佐美さん。福地さんに私が個人的に纏めてたノートのコピー渡したけど、良かった?」
「えっ……」
思い掛けないところから手を差し伸べられたようで、目をぱちくりさせてしまう。
先輩の仕事は決して話にならない程ではないが、敢えて身を入れていないような雰囲気を日々感じ取っていたからだ。
倉橋先輩はバツが悪そうに横目で視線を送ったかと思うと、ぽりぽりと頭を掻いた。
「いや私も宇佐美さんみたいに出来が良かったわけじゃないから、何か解るっていうか……。もし変な風に受け取って気悪くしてたらアレだなって思ってー」
「……助かります。ありがとうございます……」
彼女の計らいが素直に胸に響き、目を丸くしたままお礼を零していた。
正直、本当に対処を図りかねていたので、味方に付いてくれる人がいるのは心強かった。
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