結婚式の狭間に馨る

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──帰宅した旦那様が、ネクタイを緩めながらエプロン姿のわたしに纏わり付いて来た。 『今日のご飯、何?』 『あなたの好きなハンバーグよ』 新婚ほやほやのわたし達はそんな在り来たりな会話を楽しみつつも、腹の中ではせめぎ合いが繰り広げられていた。 今日こそ、この旦那様が煌めく笑顔の裏にひた隠しにしている、秘密を暴いてやるのだと── ダブルベッドにうつ伏せに寝そべって、ご機嫌で鼻歌を口ずさみながらスマートフォンの画面をタップしていると、突如背後から伸し掛った重圧に悲鳴を上げた。 「ぐぇ」 「ちょっとーまた俺のこと小説に書いてんのー? いい加減恥ずかしいんだけど」 「だって、好きなんだもん」 羽交い締めのような格好に反論を試みた尖らせた唇を、蒼真くんの唇に奪われてしまう。 「お姫様から奥様になっても、相変わらずだなー」 そんな軽口を叩きながら再度キスが落とされて、わたしは旦那様の手中に甘く堕ちて行った。 END.
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