妄想からの現実

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大神(おおがみ)さん、お疲れ様です。書類、不備なかったでしょうか?」 鐘が鳴り賑わいを見せ始めた昼時の食堂で、背後から耳に届いた名前にぴくりと身体が反応する。 わたしは椅子に座ったまま、物理的にも時間的にも感付かれない程度の間隔を保ちながらも、今日も横目で彼を盗み見る。 「お疲れ様です。急に対応して貰って助かりました! ありがとうございます」 返事は無論わたしにではなく、おそらく同じ営業部であろう彼女へ眩いばかりの笑顔が向けられた。 整った目鼻立ちに、艶のある流れる前髪と短く切り揃えられた襟足が様になっており、今日も嫌味のない爽やかさで口元には白い歯を覗かせている。 その身に纏われている、細かいこだわりの感じられる品の良いスーツも相まって、一層輝いて見える。 そんな彼の姿を2日ぶりに拝めたわたしは、満足して前方へと向き直る。 内心にんまりしつつも表情にはおくびも出さず、誰にも悟られないように。 はぁ、今日も素敵だった……。心なしか普段よりも髪型がキマってる。
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