妄想からの現実

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昼食を終え午後の業務が開始されると早速、わたしが指導を担当している新入社員の福地(ふくち)さんが慌てふためき駆け寄って来た。 「宇佐美さぁん! あのっ……問い合わせが入ってるんですけど、何か営業の人に納品書の再発行依頼したのに来ないっておっしゃってます」 「いつ依頼したか聞いた?」 「あっ、それは……」 「……エリア担当には確認したの?」 新人故に聞き取りの内容が甘く、口酸っぱく注意してはいるものの、なかなか身に付かないようだ。 エリア担当が情報を持っている可能性もあるので、今回はとりあえず横に置いておく。 「それが、関根(せきね)さん話し中で……」 涙ぐみそうな勢いで眉を下げ、青ざめている。 小柄な彼女はふわふわとウェーブの掛かったボブヘアを揺らしながら、本当に小動物のように手をぷるぷると震わせていた。 これが天然でやっているらしいのだから驚きだ。 お客様からの問い合わせ内容がわからないにしろ、関根さんに電話を取り次げないからにしろ、少々大袈裟過ぎる取り乱し具合である。 「ちょっと落ち着こうか? あ、電話終わったみたいよ。関根さん、聞いてあげてくれる?」
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