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「……」
「結局は、声を掛けたクラス委員長は私一人だったため全ては杞憂に終わった。だからこそ、先ほど安心した生徒会長さんは私に歩み寄って下さったのではないですか? 恐らく、私以外のクラス委員長も一緒の電車に乗っていた場合。先に改札をくぐって生徒会長に声をかけた人物のみ発見者として認める予定だったはずです。その場合、一番初めに声を掛けた人物を証明することが難航するケースがあるかなと予想したんです。だとすれば、有人駅の中百舌鳥駅の方がこの企画の舞台により相応しい気がしたんです。中百舌鳥駅なら、第三者の目が確実にありますから。恐らく、文化祭の企画説明時に地元密着型の愛に溢れた企画であることを強調された背景には、こういった南海電鉄の細かな特徴まで考慮に入れて考えるヒントが含まれていたのではないですか?」
「ご名答。完璧だよ」
「え、あ……。ありがとうございます」
にっこりと笑みを浮かべて生徒会長は賛辞を贈りつつ、厚みのある封筒を押し付けられるように渡してくる。押し付けられた瞬間、封筒の中身が『目的の品』と瞬時に理解する。
確かに、文化祭の打ち上げ代全額補助をゲットすべく奮闘していた。だが、貧乏学生が不意に大金を手中に収めるのは、興奮よりも戸惑いが勝ることもまた瞬時に理解する。それほど、封筒が慣れない厚みをしていたのだ。
「というか……。こんな大金持って移動するなんて、怖すぎる……」
「……ん? そうか? よーく見てみろよ、中身」
クククっと笑みをこぼす生徒会長に、促され封筒の中身をのぞく。そこで見えたのは。
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