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さらりと言い放った唇が、辰巳のそれに触れる。啄むように幾度も重ねられ、『もっと』と、そう強請りながらフレデリックの口付けは次第に深くなっていく。やがて透明な糸を引きながら離れたフレデリックの唇を親指で拭い、辰巳は指を舐めながらニッと口角を吊り上げた。
「なら、くれてやっから家に入らせろよ」
「僕を連れてって」
「ったく、甘ったれが」
僅かに上体を沈め、辰巳はあっさりとフレデリックの躰を抱え上げる。靴を乱雑に脱ぎ捨て、綺麗に揃えられたスリッパを突っかけ広い廊下を大股で進んでいく。
そのままリビングのソファに腰を下ろせば、膝の上に乗ったままのフレデリックが辰巳にしがみ付いた。
「キミが居ない間…嫉妬に狂いそうだった」
辰巳の首元にぎゅっと顔を埋め、フレデリックが震える声で囁く。
「辰巳…、僕だけの辰巳…っ」
「おいこらフレッド、俺を絞め殺す気か?」
「キミを殺していいのは僕だけだよ。キミを愛していいのも、キミが愛していいのも…僕だけ…」
恐ろしいまでの独占欲を隠そうともしないフレデリックの言葉が、静かなリビングに響いていた。
「キミにこうして触れていいのも…僕だけなのに…っ」
「阿呆。死んじまったら愛してやれねぇだろぅが。心配しなくても、お前以外抱かれる気も抱く気も起きねぇよ」
ミシミシと音がしそうなほどきつく抱き締められるのには苦笑が漏れる辰巳だが、その手は優しく金色の頭をゆっくりと撫でる。
「悪かったな、我慢させて」
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