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さすがに身の危険を察知した辰巳が半ばヤケクソで叫べば、フレデリックの腕からパッと力が抜ける。
「完全に脅しじゃねぇかよタコ」
「だって辰巳に嫌われたら僕は生きていけない」
「だからって力尽くで亭主脅す嫁がどこにいんだよ阿呆」
つい今しがたまでしおらしくしていたかと思えば、あっという間にいつものフレデリックがそこにいる。まったくとんだ照れ隠しもあったものだと呆れはするが、本音は安堵する辰巳だ。
「本当、お前は自分勝手な野郎だな」
「キミが僕を必要としてくれないなら、僕はキミを殺してしまうかもしれない」
「脅迫かよ」
「それだけキミを愛してるって事かな」
嫌味なほど男らしい顔で自信たっぷりに宣うフレデリックに、辰巳は小さく首を振る。
「けッ、もう二度とお前の事は慰めねぇ」
「それは無理だね」
「何でだよ」
「だって辰巳は優しいから。僕が不安になったら我慢できなくなるよ」
ふふんっ…と勝ち誇ったように言い放つフレデリックを心底苦々し気な顔で見遣り、辰巳は盛大な溜息を吐く。そして…。
「そうだなぁ。俺はお前に惚れてっかんな、そりゃあ可愛い嫁が不安になってりゃ慰めもするわなぁ。なあフレッド? お前ほど亭主に尽くす嫁なんて、どこ探したっていねぇからよ。そりゃあ大事にしねぇとな」
「っ……辰巳…」
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