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鎖を力一杯、握る。
「ごめん、ごめん」
ぼとぼと涙が落ちていく。何度もヘリオスに謝りながら鎖を結ぶ。結び終えるとガクッと膝が落ちた。
すぐ横にはヘリオスの顔。あんなに綺麗だった顔が苦しそうに赤黒くなってる。なのにそんな顔でも俺に微笑みかけているのだ。
「……アステル。約束、しよう。……俺は死んで、宇宙から、お前を見守る。そしてお前もこの世を去る時は、お、俺が迎えにこよう。……そして、一緒に生まれ変わるのだ。また、会えるように」
ヘリオスは小さな声で歌うように言った。
その目に恐怖の色は微塵も無い。
「ヘリオス。ごめ、ん……必ず……会おう」
水が目尻から耳へ伝う。そのぬるい水を誰かの指がそっと拭った。
痺れたように重い瞼を開けると、木漏れ日を遮るように影が覆いかぶさっていた。
宮村がまたあの目で俺を見ている。グリーンの混じった茶色い目。
「……おはよう」
宮村は覆いかぶさったまま、優しく微笑んだ。
その瞳が懐かしい。それにこの声……。
「お前は……」
宮村へ手を伸ばす。その手を宮村がそっと握った。白いシャツから覗いた手首には鎖の痕がうっすらと残っていた。
そして、同じ痕が俺の手首にも……。
俺があの日、キツク縛った鎖の痕だ――。
完
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