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その後も俺は、問答無用で宮村の突き刺すような視線を浴び続けた。
突き刺すとは言っても冷たいものではない。でも宮村の視線は宮村だと直ぐに分かった。他に誰もそんな目で俺を見てこない。
そんな目ってどんな目? と問われても感覚的なもので説明のしようがない。
真顔だし、でも睨んでるってわけじゃない。でもなんとなく、訴えかけてくるような感じ。
「あっぶなー。それってアレじゃね? ホモォってやつ?」
久しぶりに会った沢村が茶化してきた。沢村は大学時代のつれ。昔から自由人で、せっかく有名私立大を出たのに、なぜか雑誌のモデルなんかやってる。たしかにイケメンだしモデル体型だけど。成功と言えるのか? もっと有名になればある意味成功かもしれない。
ガラガラと居酒屋のドアが開いた音にフッと視線を送れば、宮村が立っていた。
「あ」
宮村も驚いた表情をしている。
その後ろで「きゃ」と可愛らしい声がした。宮村の後ろに誰かいるらしい。
「んもぉ、いきなり止まらないでよぉ」
鼻をさすりながら、ビジネススーツの綺麗なお姉さんが言った。かなりの美人だ。宮村にはあんな美人の彼女がいるのか。モデルとは言え、こちらは男。羨ましい限りだ。
「……ああ、ごめん……」
宮村は俺をチラッと見て離れたテーブル席へ座った。
「セーフだ」
「へ?」
沢村のとぼけた返事にフッと笑う。手に持っているグラスを沢村のグラスにコツンと当ててビールを飲んだ。
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