太陽と星の約束

4/10
前へ
/10ページ
次へ
 入社して三ヶ月が経った。職場の雰囲気にも、仕事にも慣れ、例の宮村の視線にも慣れてきた。……というか、放っておくことにした。人間の順応力は大したもんだ。  気を抜き始めた矢先、俺は妙な夢を見始めた。  砂埃の舞う中、剣を振るう。手首にかかる重い力。呻き声と叫び声、そして怒鳴り声。鉄が交わる金属音。  大事な人との別れ。涙を流す友。無残に転がる死体の山。流れる血。肌を切る痛み。チリチリと熱い血液が皮膚を伝う感触。  断片的な光景がフィルムコマのように映し出される。  悪夢のせいで寝起きが悪い日が続く。  あんな夢で熟睡できるわけがない。  外回りの合間に缶コーヒーを飲むけど眠くて仕方ない。変な病気じゃないよな。なんて思いながらも危機感はなかった。入社して直ぐの健康診断はどこも悪いところがなかった。なんだったら健康診断の女性の看護師さんに「お肌綺麗ですね」と褒められたくらいだ。あの時こっそりアドレス交換しておくべきだったのかもしれない。看護師さんの眼差しは結構いい感じだったんだよな。  六月の終わり。今日は梅雨の晴れ間で蒸し暑い。  不快指数は百パーセント。  逃げ場を求め公園へ入ると、木陰にベンチがたくさんある。一つくらい占拠しても大丈夫だろ。  俺は鞄をまくらに、ゴロンと横になった。  木陰にそよぐ風とわずかな木漏れ日が気持ちいい。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

102人が本棚に入れています
本棚に追加