太陽と星の約束

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「アステル」  照りつける太陽の下、土煙を浴びながらの剣の練習。それがやっと終わり、水を飲んでると名前を呼ばれた。ヘリオスが笑顔で近づいてくる。まるで太陽のように黄金の髪をなびかせる姿はギリシャ中の女性の憧れの的でもある。  ギリシャ人は暗い髪色の人間が多い。俺もそうだけど、大半はダークブラウンだ。  なのにヘリオスは突然変異か、生まれながらの金髪で、きっとその髪色から名前をヘリオスと名付けられたのだろう。ヘリオスとは太陽の意味だ。 「今度は俺の剣の練習につきあってくれ」  ニコッと微笑み、太い腕で重そうな剣を軽々と持ち上げる。 「うん。勝負だ」  腕力こそ自信があるわけでもないけど、小回りが利く分スピード戦で対等にやりあえる。それに、ヘリオスは俺の親友。断るなんてあり得ない。  ヘリオスは愉快で、快活で、豪快な男だ。女や子供にはとても優しく、剣の腕は誰よりも強い。共に剣の腕を磨き、未来を語り合う。俺にとっては唯一無二の存在。  平和で心豊かな時代。しかしその時代も長くは続かなかった。俺たちが十五になった年。 「最強の者が帝国を継承せよ」  アレクサンドロス大王はそう言って亡くなった。  それからが悪夢の始まりだった。  国で後継者戦争が始まったのだ。
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