太陽と星の約束

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 アレクサンドロス大王はバビロンで死去した。  熱病によって臨終の床にあった大王の後継者に関する遺言は「最強の者が帝国を継承せよ」というものであった。後継者の候補として、このとき王妃ロクサネが身ごもっていた赤子と側妾バルシネが生んだ庶子ヘラクレスがいるのみであった。  マケドニアの貴族、軍人たちは一斉に集って大王死後の国家体制を話し合うことに決し、会議をバビロンで開くこととした。会議の場では将軍ネアルコスがヘラクレスを推したものの賛同者は現れず、将軍メレアグロスが大王の異母兄弟アリダイオスを推し、大貴族ペルディッカスはロクサネの出産を待つべきだと主張した。  エウメネスの仲裁もあってか彼らは妥協し、アリダイオスをフィリッポス三世として即位させるかわりにペルディッカスが後見人となり、ロクサネの子が男子であるならば彼を共同統治者とする、という決定がなされた。  やがてロクサネが産んだ子は男子であったため、このアレクサンドロス四世とフィリッポス三世が共同統治者となった。  そしてペルディッカスがアレクサンドロス四世の、また声望の高かった将軍クラテロスがフィリッポス三世の後見人にそれぞれ就任し、将軍らは領内各地に太守として封じられることとなった。  二人の新王のうちフィリッポス三世は精神に障害があり、アレクサンドロス四世は未だ幼少であったためペルディッカスは事実上の最高権力者の座に就いた。  しかし、ヘリオスの叔父であるメレアグロスはそれに断固反対した。  嫌な予感は的中した。ペルディッカスはそれを実力行使で黙らせたのだ。俺の父はペルディッカスの配下にあった。  メレアグロスを筆頭に、その一派、三百人の人間が謀反を起こしたとして処刑されることになった。残党を残しておけば遺恨が残る。ペルディッカスはそれを恐れ、メレアグロスの血筋を根絶やしにすることにしたのだ。それは女も子供も関係なくだ。  もちろんヘリオスも。
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