102人が本棚に入れています
本棚に追加
処刑は公開の場で行われた。正面の台座に座るペルディッカス。処刑場を囲む群衆。気を落とした表情の者もいれば平気な顔をした者もいた。騒ぐ者はいない。
静かに砂風がその空間を横切るだけだ。
処刑場で待っているとヘリオスが足と手首に鎖を繋がれたままやってきた。
俺を見て嬉しそうに目を細める。
ヘリオスは逆さに釣り上げられ、首だけを処刑台の石の上に乗せられた。
「アステル。この処刑はお前が自ら申し出た。お前のかつての友だそうだな」
「……はい」
怒りや恐怖、悲しみ。
何がどの感情なのかもわからないまま奥歯を噛みしめ俺は返事をした。
「お前自ら罪人の手首の鎖を外し。キツク締めなおせ」
ペルディッカスが言った。
情けの無い言葉に血管がはち切れそうになる。しかし、ショックを受けている場合ではなかった。すぐ傍にいるヘリオスは逆さ吊りになり、血がどんどん頭に降りていってる。
ヘリオスの頭部が赤くなっていく。苦しいに違いない。迷いや戸惑いはヘリオスを苦しめるばかりだった。
俺は飛びつくように、ヘリオスの手首の鎖を震える手に喝を入れながら夢中で解いた。
「結びなおせ」
込み上げる感情と血液。苦しくてたまらない。でも、俺なんかよりももっと苦しんでるのが他の誰でもないヘリオスだ。
下唇をグッと噛み、再びヘリオスの手首に鎖を巻きつける。ジャリジャリと音を立てる重い鎖。
「キツクだ!」
もう嫌だ!
頭の中で何度も叫び声を張り上げた。
最初のコメントを投稿しよう!