ふるほんや

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僕はヘマをしてしまった…。
ある日、待ちに待っていた作家の新刊が学校の図書館に入ってきたという情報を聞いていてもたってもいられなくなってしまったのが原因だった。我慢すればよかったのだ。
僕が最も好きな作家、「三原きりん」さんのシリーズものの最新刊だった。人気のシリーズで、クラスの女子たちの口の端にも最近よく上っているような本だった。その人気さゆえにか、いつも通っているこの古本屋では見つけられていなかった。気づいたときには手提げかばんの中に、図書室から借りてきたその最新刊が入っていたのだった。
万引きをした後の心境に近いのではないかと思うほど(実際にしたことはないが)心拍数は上がり、この本がここにあることはバレてはいけない、バレたら終わりだ、とロッカーにしまい込んだ。午後の授業は全くと言っていいほど集中できず、とにかく早く家に帰りたいとばかり思っていて、いつもはしないような計算ミスや読み間違いを多発した。ロッカーに入れたままのあの本が気になって仕方なかった。帰りの会の時も上の空で、先生に注意されたが、そんなことは本当にどうでもよかったのだ。ただ早く帰りたかった。