朝めし前の事情

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中学に入学した僕は、朝練習のある陸上部に入部した。僕が朝食をすませて身支度をし、時計代わりに点けているテレビの時刻表示が、ちょうど七時になった時に玄関に向かい、靴紐をしめる。そして体操服の入った鞄を手にして立ち上がった途端、必ず祖母は帰ってくる。そして「おかえり」と「いってらっしゃい」を各々に声がけをし、僕の方は家をあとにする。 どうしていつもあのタイミングなのだろう。どうして僅かな狂いも無いんだろう。祖母はどこで何をしているんだろう。踏切近くにある戎神社で決まった回数だけお参りしているのだろうか。それとも草引きやゴミ拾いなどのボランティア活動をしていて、同じ時間に解散をしているのだろうか。太極拳のサークルに入って体を動かしているのだろうか。誰かと会って世間話をしているのだろうか・・・。思いつく僕の妄想は全て、祖母の『定時帰宅』の説明にはならないものばかりだった。 本人に聞いてみても良いのだけれど、部活終わりで遅くに帰宅すると、今度は早寝の習慣の祖母が自室に入ってしまっていたり、日々すれ違いが多くて、なかなかゆっくり話す時間が持てずにいた。 時計など持ち歩く習慣の無い祖母が、どうやって、連日同じ時刻に帰宅が出来るのだろうか。                  
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