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なんだこいつ。体重何キロだよ。
素直な驚きだった。そもそも男子生徒は筋肉質で見た目より重いものだ。しかも首に腕は巻きついているものの、眠っている人間。咲良の体に回した手のひらの感触に男子特有の骨ばったゴツゴツ感は一切無かった。柔らかくふわっと軽く感じる。
間近で見る頬もふわふわと柔らかそうで、本当に年頃の男子か? と疑わしくなる。ニキビ跡一つないサラリと綺麗な白い肌。くったりと斎藤に身を委ねている咲良を見下ろしながら、誘いに乗ってしまう男子生徒の気持ちが理解出来そうな気がして、斎藤は慌ててブンブンと首を振った。
違う違う。ミイラ取りがミイラになってどうする。俺の目的はそういう輩から咲良を守ることだろ? あんな繁華街に近い高級マンションに一人暮らしなんてしてたら、誘惑も多いし、寂しさに酒やタバコ、あげく薬物に手を染めるようになるかもしれない。もしかしたらもう、タバコや酒を覚えてしまっているかもしれない。……男も……。そ、その男だって、同じ高校の男子生徒なら可愛いもんだ。変な男に捕まって一生を棒に振るような目に遭ってしまわないように、ここへ避難させるのが目的だ。そうだろ?
これ以上、邪な思考に囚われまいと理路整然と己に捲し立てながら、斎藤は躊躇することなく、玄関を足でガラガラと開けて靴を脱いだ。
「よっこらしょ」
廊下に上がった時、ガコッと重量感を感じさせる物体が落ちた音がした。
足元を見ると携帯が一つ。それは斎藤の物ではなくて、咲良の物だった。見ると携帯がチカチカ光りブーブーとバイブが鳴っている。振動でポケットに入れていたのが滑り落ちたのだ。
メールの受信表示。流れてくる文章。
『わかった。面倒をかけないように』
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