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「モラルの問題だ。付き合うってことはお互いに他とはセックスしないよ。と約束することでもある」
「へぇ~、先生らしいですね」
「不特定多数の人間と付き合うのは危険なんだ。咲良、その、お前は、ちゃんとゴムをつけているのか?」
「あ~、そういうこと。大丈夫ですよ。誰かれかまわずってわけでもないし」
「誰かれかまわずは関係ない。誰とする時でもゴムは必要だ」
「そうですね。そうします」
内容が内容なのに、咲良に全然響いている様子がない。
本当に俺の話を聞いているのだろうか? と斎藤は不安に駆られた。
「咲良、今の時代、誰が病気を持っているのか分からないんだよ。お前の相手だって、自分が病気を持っていると気づいてない場合がほとんどだ。だから自分の身を守る為の最低限のルールだと思って覚えておいて欲しいんだ」
「はい」
「お前を大事にしないやつと先生は付き合って欲しくないぞ。お前は俺の可愛い生徒なんだから。それだけは覚えておけよ?」
かなり言いづらい内容だったが、担任らしくきっちり伝えることができた。斎藤がホッとした瞬間、咲良が目をパチクリさせて斎藤を見た。
「な、なんだよ?」
たじろぐ斎藤を、咲良はジーッと目の中の更に奥を覗くように見つめてくる。
咲良の目はやけに水分量が多い。いつも光をキラキラと反射してウルウルと揺らいでいる。たとえ、咲良自身に意図がなくてもその瞳は何かを訴えてるように思える。
斎藤は若干焦りながら、これ以上ない程顔を引き言った。
「なんだよ。口で言えよ」
興味を失ったように、咲良の視線が逸れた。
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