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「本当にいい子だな~」
「え? プラスポイントなの?」
口に手を当てクスクス笑う咲良を見て、斎藤は胸の奥の方でツンとしたものを感じた。
こんなイタズラも、こうやって笑ってる顔もただの十六歳。あどけないし、いたいけなただの十六歳だ。そのままの可愛い咲良でいて欲しいよ。お願いだからさ。
ラーメン屋はカウンターだけの、まさに「行列が出来るラーメン屋」という雰囲気だった。外には丸い椅子が五、六個並んでいる。二人の前に外で座ってる客は一人。二人が椅子に座ると、その後ろにあっという間に五人程が並ぶ。タイミング良くてラッキーだった。と斎藤は後ろに並ぶ行列をチラリと見て思った。
咲良が寒そうに腕を組んで背中を丸める。それに気が付いた斎藤は着ていた上着を脱ぎ、咲良の背中へと掛けた。
「いいの?」
「おお」
どちらかというと暑がりだからこれくらい涼しい方が丁度いい。斎藤がそう思いながらピンクと紫に染まる雲を見上げていると隣からボソッと小さな声が聞こえた。
「……ありがと」
咲良は掛けた上着の前を寄せて、俯いたまま礼を言った。斎藤はまた咲良の小さな肩を抱いてげんこつで頭をグリグリ撫でてやった。
「ありがとうございますだろ?」
「うぅ、それ何気に痛いんだからぁ」
「あははは!」
「はげちゃったら先生のせいっすよ」
「そっか。そりゃ悪かった」
口を尖らせて文句を言う咲良はとても可愛い。斎藤はげんこつを解き、手のひらへ戻すと今度は頭を「よしよし」と撫でてやった。咲良はもっと俯いて表情が見えなくしてしまう。でもその耳がほのかに赤くなっているのに斎藤は気づいた。
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