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「あ、そういえば、生活費とか、学費は親御さんから貰っているんだよな?」
「えぇ、振り込まれてます」
「うんうん。じゃ、大丈夫だな。貴重品とか逆にここに置いておいた方がいいなら置いといてくれよ。あんな田舎で空き巣に遭うこともないと思うけどな」
「荷物これだけだよ? 貴重品なんてあるわけないでしょ」
制服と私服が入っただけの鞄と紙袋。「これだけ」と言い切る咲良が妙に切なく、斎藤の胸を締め付けた。
「そっか。じゃあ……あ、紙袋まだ余ってるか? 玄関の靴も持っていかなきゃな?」
斎藤は咲良から受け取った紙袋に靴箱の二足しかない靴を入れる。冷蔵庫の中身など心配ではあったが、定期的に掃除に来る人間がいるとのことで大丈夫だろうと判断した。
マンションを出て車へ乗り込み、斎藤は窓からチラリとマンションを見上げた。
高級マンションだけど、外側だけ。中身は空っぽだ。
斎藤はため息一つ落とし、ハンドルを握りなおした。咲良を助手席へ乗せ、斎藤家を目指す。
「よーし。行くぞ。忘れ物はないな?」
「はい」
咲良は窓の外を眺めながら「困ったなぁ」とぼやいているような表情をしていた。
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