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「できるならどうぞ。今日来たのは、野崎冬馬の件についてです」
「野崎? ……ああ、あの人」
「ええ。貴方が、蘇芳友梨さんが亡くなった時間帯、この店に彼がいたと証言したんですよ」
「そうよ」
合川は野崎が死んだことを知っているのかいないのか、表情を変えない。冷たい声音で頷いた。
「だがよく考えれば変だ。野崎を見たのは貴方しかいない。他の店員は見ていないと証言している」
「言ったでしょう、彼はバックヤードにいたの! 今みたいに私しかいなかった」
「指輪を買いに来た男をバックヤードに入れる理由は何ですか?」
合川の主張を聞きながらも、成宮が鋭く切り込む。彼女は口ごもってしまった。
「……それは」
「本当は野崎はここにいなかったんですよね」
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