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さらに鷲尾が畳みかけるが、馬場は丁寧な口調で彼にそれ以上いわせようとしなかった。
「それに、蘇芳さんという女性も私は知らない」
そう言われてしまえば何もいえなくなる。だが鷲尾は食い下がった。
「キャバクラの常連だそうじゃないですか。オーナーから話を聞きました」
「……ま、確かに常連です。でも上司との付き合いのためですよ」
「蘇芳さんは彼女ではない、と」
「ええ。私には婚約者もいますから」
そういうと、馬場はなぜか自慢げに少し微笑んだ。その口から出てきた名前はさんざん振り回されたあの女性――
「合川美代さんです」
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