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「そうそう、馬場公太ってあの手帳のなかにあった名前だよ。だから俺、頭の中に残ってたみたいで」
あの手帳とは、蘇芳の持っていた黒い手帳だ。細かく内容を見ていた成宮の脳内にはその字面が残っていた。
「でも、蘇芳さんとは関係ないって言われたんでしょ?」
料理が運ばれてきて、それを取り分けながら清水がいう。サラダがのったお皿を成宮と鷲尾のほうにおくと、自分のぶんを取皿にいれはじめた。
「ああ。人付き合いのひとつだと言った。知らないわけがないのに、知らないと言い切るのはおかしい」
そして、鷲尾にはもうひとつ気になることがあった。アリバイを聞いた時、彼は“その日も同じ”だといった。
――日付は言っていないのに、いつのことを聞いたのか馬場は分かっていた。もちろん、頭の中ですばやく計算したという可能性もあるが、怪しい。
「だんだん犯人らしくなってきたね!」
考え込む鷲尾を横目に、嬉しそうに成宮がはしゃぐ。内容を聞かなければただの仲良しな3人の飲み会である。
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