28. はるるんとまりりんとクロ ―居酒屋にて―

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「そうそう、馬場公太ってあの手帳のなかにあった名前だよ。だから俺、頭の中に残ってたみたいで」  あの手帳とは、蘇芳の持っていた黒い手帳だ。細かく内容を見ていた成宮の脳内にはその字面(じづら)が残っていた。 「でも、蘇芳さんとは関係ないって言われたんでしょ?」 料理が運ばれてきて、それを取り分けながら清水がいう。サラダがのったお皿を成宮と鷲尾のほうにおくと、自分のぶんを取皿にいれはじめた。 「ああ。人付き合いのひとつだと言った。知らないわけがないのに、知らないと言い切るのはおかしい」 そして、鷲尾にはもうひとつ気になることがあった。アリバイを聞いた時、彼は“その日も同じ”だといった。 ――日付は言っていないのに、いつのことを聞いたのか馬場は分かっていた。もちろん、頭の中ですばやく計算したという可能性もあるが、怪しい。 「だんだん犯人らしくなってきたね!」 考え込む鷲尾を横目に、嬉しそうに成宮がはしゃぐ。内容を聞かなければただの仲良しな3人の飲み会である。
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