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「クロさんだけ、って……」
成宮が困ったように笑うと隣を見る。
鷲尾は珍しくうろたえているようで、汗が首筋に流れていた。暑いからというよりは、緊張でといったほうが正しいのだろう。
「俺が悪いのか……?」
「言い方ってもんがあるでしょ。はるるんが大事に思ってるならなおさらだよ」
「別にそんなことは……」
成宮には鷲尾が先ほどのようにいった理由はお見通しなのだが、本人は気付かないのか気付かないフリをしているのか、口ごもってしまった。
「追いかけないの?」
促すように聞いてみるが、鷲尾は首を横に振って否定した。見るからに落ち込んでいる。
「じゃあ俺が行くよ。はるるんは部屋のほうよろしく」
「ああ」
親友の気持ちを慮った成宮は鷲尾の背中を押してマンションへと向かわせてから、清水の後をおいかけた。
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