31. 鷲尾と清水の喧嘩

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「クロさんだけ、って……」 成宮が困ったように笑うと隣を見る。 鷲尾は珍しくうろたえているようで、汗が首筋に流れていた。暑いからというよりは、緊張でといったほうが正しいのだろう。 「俺が悪いのか……?」 「言い方ってもんがあるでしょ。はるるんが大事に思ってるならなおさらだよ」 「別にそんなことは……」 成宮には鷲尾が先ほどのようにいった理由はお見通しなのだが、本人は気付かないのか気付かないフリをしているのか、口ごもってしまった。 「追いかけないの?」 促すように聞いてみるが、鷲尾は首を横に振って否定した。見るからに落ち込んでいる。 「じゃあ俺が行くよ。はるるんは部屋のほうよろしく」 「ああ」 親友の気持ちを(おもんばか)った成宮は鷲尾の背中を押してマンションへと向かわせてから、清水の後をおいかけた。
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