199人が本棚に入れています
本棚に追加
/179ページ
成宮が上目遣いで聞くと、清水は笑って首を横に振った。まるで犬に甘えられた気持ちになった彼女はさっきまでのかたい表情をほどいた。
だが、またすぐ憂いを帯びた目になる。
「ねえ。はるるんに伝えてほしいことあるんだけど」
「俺から? なんて?」
「もうね、はるるんと、クロさんと会うのやめようかなって」
「えーなんでー!」
清水の申し出に成宮はブーイングをする。彼女の気持ちは揺らいでいた。
――だって、メールも電話も無視されてるのに好きでいるなんてしんどいもん。
言葉にこそしないが、その気持ちは清水の心を間違いなく動かしていた。見返りを求めていたわけではない。
ただ、いつもみたいに、出会ったときのように話したいだけなのに、無視されてしまっていると距離はどんどん開いていく。
最初のコメントを投稿しよう!