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呼び方こそいつものあだ名だが、口調はそれで、清水は少しのあいだ口を閉じた。そして、ゆっくりと話し始める。
「……よくない……、よくない、けど、私はもう」
「まりりん、自分で言ったよね、できることならなんでもやるって」
成宮が思わず清水の右手を掴んだ。手を掴まれた彼女は、成宮のほうを見る。真面目な面持ちで、だが優しい声音で彼は続けた。
「ここではるるんから離れないで。お願い。……絶対、後悔する。はるるんも、まりりんも」
「クロさん……」
手から伝わってくる成宮の温度に思わず清水の目に涙がたまる。成宮はそれを見て困ったように微笑み、彼女の目元に指を伸ばした。
透明なしずくを指先ですくうと、そのまま清水の頭をなでる。
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